権限とアクセス管理

社内ツール・管理画面をVPNなしで守る|Cloudflare Accessによるゼロトラスト構成

内製ツールが10、20と増えても、VPNを増やさず、Cloudflare Accessで人を確認して守れます。
内製AIツールや検証環境が増えて、アクセス管理に困っている情シスやシステム担当の方の悩みに答えます。
VPNとゼロトラストの違い、5つの導入手順、直結経路と退職時の失効で見落とす点が分かります。

古野光太朗古野光太朗·2026.08.09·最終更新 2026.10.03·読了 9分
社内Webアプリの認証を比べる。VPNのみで守る構成と、アプリの前段で認証する構成の比較

社内ツール・管理画面を、VPNなしで守るにはどうすればよいですか?

Cloudflare Accessをアプリの前段へ置き、利用者と条件を確認します。オリジンへの直結経路と、既存セッションの失効も検査します。

生成AIの普及で、社内チャット、検証用ダッシュボード、部門ごとの管理画面といった内製ツールが増えています。短い試作で動くツールを作れるため、公開の仕方は後回しになりやすくなります。

内製ツールが増えるときに想定する失敗は、次の3つです。

  1. URLを知っていれば誰でも入れます。「社外秘のつもりだが、URLさえ知っていれば外部からでも開ける」状態のまま、検証環境が本番相当のデータを扱い始めます。Basic認証を掛けていても、パスワードは共有チャットに貼られて使い回されます。退職者にも残ったままになりやすくなります。
  2. 退職者のアクセスが残ります。ツールごとに個別アカウントを発行する運用だと、削除する対象も個別になります。人事の退職手続きと、内製ツールのアカウント削除が別の作業である限り、どこかで抜け落ちます。
  3. 監査で説明できません。情シス審査やセキュリティ監査で「誰が、いつ、何にアクセスできるか」を一覧で求められたとします。IPアドレス制限やBasic認証だけでは、「誰が」に当たる記録が残っていません。

根っこは同じです。「ネットワークに入れるかどうか」だけで守っている限り、入った後の一人ひとりを見分ける手段がありません。

典型的な対応は、「VPNを増やす」か、「既存VPNの対象を広げる」ことです。ただ、ツールが増えるほど無理が出ます。従来の構成でVPN接続後に広いネットワークへ届き、アプリごとの認可もない場合は、到達範囲が広がります。VPN製品や構成によって制限は異なります。内製ツールが10、20と増えると、申請・発行・失効のやり取りだけで、情シスの工数が埋まっていきます。

ゼロトラストは、判定のタイミングを、ネットワークの入口からリクエスト1つひとつへ移す考え方です。米国NIST(国立標準技術研究所)が2020年8月に公表した『Zero Trust Architecture』(NIST Special Publication 800-207)は、これを整理しています。守る対象は、静的なネットワーク境界ではありません。ユーザー・資産・リソースそれぞれを個別に守る考え方です。

実務の言葉にすると、ここで比較するVPNは「入口で認証した後、広い範囲へ到達できる」構成です。ゼロトラストは「部屋の扉ごとに、開けるたびにIDを提示してもらう」設計に近くなります。

Cloudflare Accessは、Zero Trust Network Access(ZTNA)を担う製品です。SASE(Secure Access Service Edge)プラットフォーム「Cloudflare One」の一部です。公式ドキュメントは、次の仕組みと説明しています。すべてのリクエストを、アイデンティティとコンテキストに基づいて認証・認可します。本稿の機能記述は、2026年8月時点の公式情報に基づきます。出典は、developers.cloudflare.comとblog.cloudflare.comです。

Cloudflare Accessの導入は、どんな手順で進めますか?

検証環境の1本から始め、IdP連携、自動化の経路の分離、退職・異動の手順との連動、横展開の順に進めます。

管理画面の前段で確認する対象と、拒否または次の工程へ渡す条件を示した設計例です。
TechWorker作成:本文の手順を図にした設計例です。製品の公式画面や導入効果の実測ではありません。画像を押すと拡大できます。

最初につまずきやすいのは、「対象のアプリを改修しないといけないのでは」という思い込みです。実際には、多くの場合、アプリ側のコードには触れません。

  1. リスクの高いツールを1つ選び、前段を作ります。全社の内製ツールを一度に囲おうとすると、関係部署の調整だけで止まります。個人情報を扱う検証環境や、管理者権限を持つ管理画面など、最もリスクの高い1つを選びます。Cloudflare Tunnelは、cloudflaredという常駐プロセスを使います。このプロセスが、アプリの動くサーバーからCloudflareへ、送信のみの接続を確立します。公開用の固定IPは要りません。ファイアウォールでインバウンドポートを開けずに、社外公開できます。公開するホスト名、DNS、Tunnelの接続先を確認し、その前段にAccessを配置します。既存URLを維持できるかは現在の公開構成によります。
  2. 社内IdPを接続し、ポリシーを1本作ります。IdP(社内のID基盤)は、Google WorkspaceやMicrosoft Entra ID(Azure AD)、Oktaなどをそのまま接続できます。汎用SAML/OIDCにも対応します。IdPが未整備なら、Cloudflare組み込みのワンタイムPIN(メール認証)も使えます。ポリシーは、「誰が」「どのアプリに」「どんな条件で」アクセスできるかを、アプリ単位でルール化します。まず「情シス部のみ許可」を1本作ります。公開範囲は、アプリごとに分けられます。検証環境は情シスのみ、社内チャットは全社員、といった使い分けです。IdP側のグループ情報をそのまま条件に使えるので、Access専用の権限台帳は要りません。IdPのグループ管理を運用できていれば、Access側は「そのグループを許可する」ルールを1本足すだけです。
  3. 自動化の経路を、人のログインから分けます。Service Tokenは、人のログインを介さない通信を認証する仕組みです。Client IDとClient Secretを発行します。監視ツールやAPI連携、CI/CDなど、人が操作しない経路を塞がずに残せます。セッション期間も決めます。ログイン後に再認証を求めるまでの有効期間で、アプリごとに設定できます。既定は24時間で、15分から1か月の範囲で調整できます。機微な管理画面ほど短くします。
  4. 退職・異動の手順とAccessを連動させます。退職・異動のとき、IdP側のグループ更新と、Accessの許可条件を対応させます。既存セッションが直ちに無効になるとは限りません。退職時はセッションの失効を行い、拒否されることまで試験します。退職・異動のチェックリストに、Accessのポリシーとservice tokenの棚卸しを組み込みます。
  5. 対象を広げ、監査ログを月次で見ます。1本通った型は、次のツールへそのまま複製できます。検証で固めたポリシーを、他の内製ツールや管理画面へ広げます。監査ログは、誰が、いつ、どのアプリに、許可されたか拒否されたかを記録します。月次で確認する運用に乗せます。情シス審査や社内監査で、アクセス権限の一覧をそのまま出せます。

契約前に、対象人数、必要な認証機能、ログ保持期間を現在のプランで確認します。記事の手順は、1つのWebアプリを前段で保護する設計例です。全社ネットワークの移行や、アプリ内部の業務認可を代わりに行うものではありません。

うまくいかない例には、どんなものがありますか?

バイパス経路の残存、API・Webhookの締め出し、退職・異動の手順との非連動、最初から全社ツールを狙うことが典型です。

Accessを前段に置いても、次を設計しないままだと、ゼロトラスト化したつもりで穴が残ります。

1本のツールを守って終わりにしません。内製ツールが増えるたびに同じ型を複製し、退職・異動の手順や監査と連動させ続けます。それで初めて、「説明できる状態」が維持されます。

VPNとゼロトラストは、何が違いますか?

比較対象は、VPN接続後に広いネットワークへ届く構成と、アプリの前段で認証・認可するAccess構成です。VPN自体の制御能力は製品と設定で異なります。

観点VPNゼロトラスト(Cloudflare Access)
判定のタイミング接続時の認証が中心の構成リクエストのたびに毎回
接続後の到達範囲社内ネットワーク全体に届くことが多い許可されたアプリ単位に限定
本人確認の粒度アプリの別認可がない場合、接続可否が中心IdPのID・グループ単位で、誰がアクセスしたかを記録
退職時の対応VPNアカウントの削除を個別に実施社内IdP側の無効化と連動させやすい
ログに残るもの接続ログ(IPなど)中心誰が・いつ・どのアプリに・許可か拒否かを記録

ゼロトラストへの置き換えは、「VPNをやめる」というより、「判定の粒度を細かくする」ことに近い作業です。

よくある質問

無料プランでもCloudflare Accessは使えますか?

無料枠はありますが、対象人数、必要機能、ログ保持期間を現在の公式プランで確認してください。人数上限や保持期間を、過去の紹介値だけで判断しません。退職者調査など長期保存が要る場合は、導入前に条件を照合します。

社内システムの改修は必要ですか?

多くの場合は不要です。Cloudflare Tunnelを使えば、アプリ自体にコードを追加せずに済みます。インバウンドポートも開けずに、前段でAccessを挟めます。既存URL、DNS、既存認証との併用は、現在の構成を確認して決めます。アプリ側で利用者のIDを使う場合は、追加の検証実装が要ることがあります。

既存の社内IDプロバイダをそのまま使えますか?

Google Workspace、Entra ID(Azure AD)、Oktaなど、主要なIDプロバイダと連携できます。汎用のSAML/OIDCにも対応するため、多くの社内IdPをそのまま接続できます。ID基盤がない小規模チームでも、組み込みのワンタイムPIN(メール認証)から始められます。

API連携やWebhookはどう扱えばよいですか?

人のログインを前提にしたポリシーだけでは、外部からのAPI呼び出しやWebhookまでブロックします。Service Tokenを使えば、自動化された通信専用の認証経路を、別に用意できます。認証は、Client IDとClient Secretで行います。導入時に、人が使うのか、システムが使うのかを、経路ごとに分けて設計します。

次の一歩は何から始めればよいですか?

リスクの高い内製ツールを1つ選び、検証環境として、Accessの前段とポリシー1本を試します。

  1. 個人情報を扱う検証環境や、管理者権限を持つ管理画面から、1つを選びます。
  2. Cloudflare Tunnelで前段を作り、社内IdPを接続して、ポリシーを1本作ります。
  3. 監視ツールやWebhookなど、人が操作しない経路を洗い出し、Service Tokenで分けます。

この記事は、どの資料をもとにしていますか?

2026年10月3日にアプリ保護とセッション管理の公式手順を照合しました。本文は構成の設計例で、導入効果の実測ではありません。料金・人数上限・ログ保持の数値を今回更新済とは扱いません。

古野光太朗
古野光太朗 / 株式会社TechWorker 代表取締役 CEO兼CTO

上場企業を含む37社・2,500名の生成AI導入・活用を支援。「AIはエンジンだ。コンテキストは燃料だ。」を掲げ、企業の業務文脈をAIが扱える形に整える「コンテキスト整理」を専門とする。

内製AIツールのセキュリティ設計も、導入支援の一部として伴走します。

ツール選定・セットアップだけでなく、社内ツールの公開範囲や権限設計まで含めて相談できます。「検証環境が増えすぎて、どこから手を付ければいいか分からない」段階からのご相談も歓迎です。

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