定着支援 × 利用率

Geminiが定着しない原因と対策|「もう入っている」のに使われない構造

Microsoft Copilotの定着支援は「有償ライセンスを配ったのに使われない」という問題から始まる。Geminiは違う。買った実感がないまま、ある日から全社員のGmailとドキュメントに機能が現れる。だから「使われない」の中身も変わる——気づかれない、業務に結びつかない、聞き方が分からない。本記事は、Geminiに固有の定着しない構造を3つに分解し、それぞれに効く手を、研修設計と運用の両面から整理する。

研修・導入のご相談でよく挙がる声※ 実際の相談で挙がる論点をもとにした例です
古野光太朗古野光太朗·2026.07.27·最終更新 2026.07.27·読了 9分
Gemini Adoption — 「入っている」と「使われている」の差※ サンプル・数値はイメージです(実データではありません)
Usage / 部門別の週次利用率(サンプル)
マーケ72
営業48
管理部門23
製造・現場9
同じ日に、同じ機能が、全社員に開いている。差は機能ではなく設計から生まれる。
Why / 使われない3つの理由
  • 気づかれていない
    買った実感がないまま画面に現れるため、誰も「導入された」と認識していない
  • 渡す情報がない
    業務データがDrive上になく、AIが手ぶらのまま使われている
  • 聞き方が個人に閉じる
    うまくいった指示が本人の中だけに残り、組織に広がらない
この記事の要点
  • GeminiはGoogle Workspaceの各プランに含まれるため、購入の意思決定を伴わずに全社員の画面に現れる。だからCopilotの「配ったのに使われない」ではなく、「あることに気づかれない」が起きる。
  • 使われない原因は3つに分解できる。①気づかれていない渡す情報がDriveにない聞き方が個人に閉じる。打ち手はそれぞれ違うので、混ぜて議論しない。
  • 利用率は目的ではなく施策の効果を測る指標。外部の平均値を目標に置くより、自社の部門別・機能別の差を見て、伸びしろの大きいところから手を打つほうが実務的。

なぜGeminiは「入っているのに使われない」のか?

買った実感を伴わずに配られるため、導入の告知も、使う理由の説明も、誰も担当していない状態になる。

Microsoft 365 Copilotの定着支援は、たいてい「1人あたり月額数千円のライセンスを配ったのに利用率が上がらない」という切実な問題から始まります。金額が見えているので、誰かが必ず問題視する。Geminiはこの入口が違います。Google Workspaceの各プランに Gemini AI アシスタントが含まれるため、多くの企業では「導入した日」が存在しません。

結果として、Copilotでは自動的に発生する次の3つが、Geminiでは誰の担当にもならないまま抜け落ちます。

本来必要なことCopilotの場合Geminiの場合
導入の告知ライセンス配布と同時に必ず案内が出る配布イベントがないため、告知そのものが発生しない
使う理由の説明費用が見えるので「元を取る」動機が働く追加費用がないため、使わなくても誰も困らない
推進の責任者投資の担当部署が自然に決まる「Workspaceの機能の1つ」に埋もれ、担当が決まらない

つまり、Geminiの定着支援は「使わせる」より前に「導入したことにする」ところから始まります。すでに使える状態を、あらためて社内的に立ち上げ直す——遠回りに見えて、ここを飛ばした施策はほぼ機能しません。

費用が発生しないことは、導入のハードルとしては有利に働き、定着のドライバーとしては不利に働く。この非対称性を理解しないまま「無料で使えるのだから広まるはず」と考えると、半年後に利用率9%の部門が残る。

使われない原因を、どう分解するか?

気づかれていない・渡す情報がない・聞き方が個人に閉じる、の3つ。打ち手がそれぞれ違う。

「使われていない」を1つの問題として扱うと、施策が総花的になります。実際には、部門ごとに詰まっている場所が違います。分解の基準は次の3つです。

原因現場に出るサイン効く打ち手効かない打ち手
① 気づかれていない「うちは使えるんですか?」という質問が出る/管理職が存在を知らないあらためての告知、管理職経由の周知、業務の場での実演プロンプト集の配布(読む前提が成立していない)
② 渡す情報がない触ってはみたが「一般的な回答しか返ってこない」で止まる対象業務のファイルをDriveへ寄せる、参照させる資料を決める研修の追加(渡すものがない状態は学習では解けない)
③ 聞き方が個人に閉じる一部の社員だけが使いこなし、他は諦めている業務別の型をGemとして共有、うまくいった指示を回収する場個人の努力への期待(できる人はすでにやっている)

この3つは順番に効きます。①が解けていない部門に③の型を配っても読まれず、②が解けていない部門に①の告知を打っても「使ってみたが役に立たなかった」という悪い第一印象を強めるだけです。部門ごとにどこで詰まっているかを見てから手を選ぶ——定着支援の実務は、施策の豊富さではなくこの見極めの精度で決まります。

「気づかれていない」に、どう手を打つか?

告知を一度打って終わりにしない。管理職の口から、実際の業務の場で見せるのが最も効く。

認知の施策で唯一やってはいけないのは、全社メール1通で済ませることです。すでに機能が存在しているぶん、社員の側に「新しく始まった」という感覚がありません。効くのは、業務の流れの中で目に入る形にすることです。

打ち手なぜ効くか実施の目安
管理職から部門会議で伝える「使ってよい」という許可が、上司の口から出ることに意味がある推進担当が5分の説明素材を作り、管理職に配る
実際の業務で実演する汎用デモではなく自部門の資料で見せると、自分ごとになる部門ごとに1業務、10分の実演を1回
使っている人を可視化する「隣の人が使っている」が最も強い動機になる社内チャットで活用例を共有する場を常設
入口を業務側に置くツールから入らせず、業務手順書の中にリンクを置く既存のマニュアル・手順書を改訂する

推進役を「AIに詳しい人」から選ぶと、現場との距離が開きやすい。その業務をよく知っていて、周りから質問されやすい人を選ぶほうが機能する。技術的な難所は情シスが引き取ればよい。

「聞き方」を、どう組織の資産にするか?

うまくいった指示を個人の中に残さない。業務別の型をGemとして共有し、更新し続ける。

生成AIの活用が伸びる組織と止まる組織の差は、才能ではなく回収と共有の仕組みにあります。誰かが良い指示の書き方を見つけても、それが本人のチャット履歴に埋もれる限り、組織の力にはなりません。Geminiでこれを解く道具が Gem です。役割・前提・出力形式を固定したカスタム版を作り、共有して使い回せます。

段階やることできていないと起きること
1. 回収各部門から「うまくいった使い方」を月1回集めるノウハウが異動と同時に消える
2. 型化頻度の高い業務からGemに落とす(3〜5個で十分)毎回ゼロから指示を書き、品質が人によって割れる
3. 配布対象部門に共有し、使い方を1枚で説明する作ったが使われないGemが増えていく
4. 更新四半期に1度、実務の変化に合わせて手直しする古い前提のまま使われ、誤りの温床になる

ポイントは数を作らないことです。最初から20個のGemを用意すると、どれを使えばよいか分からなくなり、結局どれも使われません。頻度が高く、成果物の形が決まっている業務から3〜5個。運用が回ってから増やします。作る側の体制をどう広げるかはGemsとWorkspace Studioによる内製で扱います。

何を測り、研修をどこに置くのか?

利用率は施策の効果測定。目的は業務側の変化。研修は初回・部門別・フォローの3点に配置する。

利用率は測るべき指標ですが、目的ではありません。目的に置くと、開くだけの利用が増えて数字が実態から離れます。実務的な組み立ては次の2階建てです。

そのうえで、研修は1回のイベントではなく3つの配置で考えます。

配置目的やらないと起きること
初回(全体)何ができるか、何をしてはいけないかの共通認識を作る部門ごとに解釈が割れ、ルールの問い合わせが増える
部門別(実務適用)自部門の業務・資料で演習し、型を作って持ち帰る「便利そう」で終わり、業務が変わらない
フォロー(数週間後)詰まった点を回収し、型を更新する日常業務に戻ったところで元の手順に引き戻される

TechWorkerでも、上場企業を含む37社・2,500名の支援を通じて、単発研修より「初回+部門別+フォロー」の3点配置のほうが活用が持続する傾向を一貫して見てきました。Geminiのように費用の痛みがないツールほど、放っておくと自然には広がりません。導入設計そのものはGeminiの法人導入、予算の考え方はGemini研修の費用相場で扱っています。

よくある質問

Geminiが使われない一番の原因は何ですか?

「配られていない」ことではなく「あることに気づかれていない」ことです。GeminiはGoogle Workspaceの各プランに含まれるため、購入の意思決定を伴わずに全社員の画面に現れます。誰も導入を告知しないまま機能だけが存在している状態が起きやすく、まず認知の設計から必要になります。

利用率はどのくらいを目標にすべきですか?

業種・職種で妥当な水準は変わるため、外部の平均値を目標に置く意味はあまりありません。自社の部門別・機能別の利用状況を可視化し、伸びしろの大きい部門から手を打つほうが実務的です。利用率は施策の効果を測る指標であって、目的そのものではありません。

プロンプト集を配れば定着しますか?

配るだけでは足りません。定着した組織に共通するのは、業務ごとに「これを使えばよい」という型が決まっていて、その型が更新され続けていることです。Geminiでは、その型をGemとして共有し、担当者が使い回せる状態にするところまで含めて設計します。

研修は何回やればよいですか?

回数より配置です。初回で全体像を渡し、その後に部門別の実務適用、数週間後にフォローを置く構成が機能しやすい形です。単発で終わると、日常業務に戻ったときに元の手順へ引き戻されます。

古野光太朗
古野光太朗 / 株式会社TechWorker 代表取締役

上場企業を含む37社・2,500名の生成AI導入・活用を支援。「AIはエンジンだ。コンテキストは燃料だ。」を掲げ、企業の業務文脈をAIが扱える形に整える「コンテキスト整理」を専門とする。

「入っているのに使われない」を、定着支援の設計から解きます。

TechWorkerは、業務別プロンプトの型づくり、Gemの整備、推進担当の育成、フォロー会の運用までを一体で支援します。研修を起点にして、そこから先の定着を仕組みで支えるのが基本方針です。上場企業を含む37社・2,500名の支援知見をもとに、貴社の業務に合わせて設計します。

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