Client Disclosure

士業の生成AI利用を顧客へどう説明するか|同意・守秘・費用を契約時に分ける

士業事務所が生成AIを使う際、顧客への説明を守秘、利用目的、入力範囲、人の確認、費用に分け、形式的な一文同意にしない実務を解説します。

古野光太朗古野光太朗·2026.09.18·一次情報 6件
士業の案件で生成AIを使う際に顧客へ説明する目的、入力範囲、提供先、人の確認、費用、拒否時の代替の6項目を示す図

「当事務所ではAIを利用することがあります」という一文だけでは、顧客は何が入力され、誰が確認し、費用へどう反映されるか判断できません。顧客説明は、生成AIの導入を正当化する免責ではなく、利用目的、情報範囲、確認責任、外部提供、費用、拒否時の代替手順を案件ごとに理解可能にすることが目的です。

一律開示ではなく、案件への影響で判断する

ABA Formal Opinion 512は、弁護士の生成AI利用についてcompetence、confidentiality、communication、fees等の既存義務が適用されると整理しています[1]。すべての利用で同じ説明が必要とは限りませんが、顧客の判断やリスクへ重要な影響を与える場合、十分な説明が必要です。

日本の士業では資格法、会則、個人情報、委任契約、顧客との守秘合意が異なります。海外の弁護士向け意見を日本の法的義務としてそのまま適用しません。その代わり、顧客が知っていれば条件を付ける、拒否する、別手段を選ぶ可能性がある利用を洗い出す観点として使います。

説明を六つの欄に分ける

顧客向け説明は次の六つを分けます。

  1. 目的:要約、論点整理、下書きなど何に使うか。
  2. 入力範囲:氏名、案件事実、資料全文を入力するか。
  3. 提供先:どのサービス、契約、保存・学習設定か。
  4. 人の確認:資格者・担当者が何を原資料へ戻るか。
  5. 費用:時間、利用料、固定報酬へどう反映するか。
  6. 選択肢:顧客が制限・拒否した場合の代替手順。

「AIは学習しません」だけでは不十分です。ログ保存、support access、subprocessor、地域、削除、モデル改善設定など、実際の契約と設定に基づいて説明します。ベンダーのmarketing表現を契約保証として転記しません。

一般条項と案件別同意を分ける

ABAの解説は、client confidencesをself-learning AIへ入力する場合のinformed consentや、boilerplateだけでは十分でない可能性を指摘しています[2]。契約書には事務所の基本方針を置き、特定案件で機密情報を外部AIへ送る、高影響判断の下書きに使う、顧客が指定したAIを使う場合は、追加説明と記録を行います。

一般条項は「どのようなAIも自由に使える」という包括同意にしません。許容する用途、禁止する情報、承認が必要な例外、顧客の問い合わせ先、方針更新の扱いを短く示します。案件別記録には、利用目的、対象資料、サービス、設定、説明日、顧客の条件、代替手順を残します。

CCBEの2025年ガイドも、合理的に顧客が異議や条件を示すと考えられる利用では透明性を確保し、automation complacencyやprofessional judgmentの代替を避けるよう述べています[3]。これは欧州弁護士向けで、日本の規則を置き換えるものではありません。

費用説明を時間削減の広告にしない

生成AIで下書き時間が短くなっても、確認、修正、出典検証、顧客説明は残ります。ABA Formal Opinion 512は、時間制の場合は実際に費やした時間を基礎とし、AIを学ぶ一般的時間を顧客へ当然に転嫁できないと整理しています[1]。一方、固定報酬や価値ベースの報酬は契約と合理性の検討が必要です。

顧客には「AIを使うので必ず安くなる」と約束せず、何が効率化され、何が人の専門判断として残るかを説明します。AI利用料を実費として扱う場合、事前に基準と算定方法を示します。関連する顧客向け料金説明と重複しないよう、本記事では契約時の説明項目に焦点を置きます。

説明後の運用を一致させる

契約書に安全な利用を書いても、職員がconsumer AIへ資料を貼れば説明は破綻します。利用サービスのallowlist、入力禁止情報、匿名化、承認、出力レビュー、ログ、インシデント連絡を所内手順へ落とします。新しいserviceや機能へ切り替えるときは、既存同意の範囲内か再確認します。

関連するベンダー審査生成AI利用記録顧客資料の著作権確認も参照してください。

士業事務所の生成AI利用ルールと顧客説明を相談する

説明文を更新するトリガー

利用service、保存・学習設定、subprocessor、入力する資料、料金体系、人の確認工程が変わった場合は、既存の説明範囲内かを再確認します。単なるモデル名の更新でも、データ経路や規約が変わるなら再説明が必要になり得ます。逆に、内部の軽微な機能更新をすべて顧客通知へ直結させず、案件への影響を基準に判断します。

説明と実態の一致は定期監査します。職員への聞き取りだけでなく、許可service、設定、access log、案件記録、顧客条件を抽出し、禁止した入力や未承認serviceがないか確認します。問題があれば利用停止、顧客連絡、専門家相談の順序を事前に決めておきます。

適用限界

本記事は法的助言ではありません。資格、業務、地域、案件、裁判所・行政機関の規則で要件は変わります。所属団体の規程、個別契約、専門家の確認を優先してください。

一次情報と確認範囲

確認日:2026年9月18日。製品仕様・制度は更新されるため、導入時はリンク先の最新版を再確認してください。海外の制度・職業規範は日本へ直接適用せず、相違点と限界を本文に明記しています。

  1. H-1
  2. H-2
  3. H-3
  4. H-4
  5. H-5
  6. H-6
古野光太朗
古野光太朗 / 株式会社TechWorker 代表取締役 CEO兼CTO

上場企業を含む37社・2,500名の生成AI導入・研修支援で得た実務知をもとに、導入・運用・顧客理解を扱っています。この実績はTechWorkerの生成AI支援実績であり、個別製品の導入実績を示すものではありません。

生成AI利用の顧客説明を整える

一般条項と案件別説明を分け、所内運用と一致する同意・記録を設計します。

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